グループ区分とは
 WRCには様々なマシンが出場しますが、それらはグループクラスでカテゴリー区分されて、総合タイトルの他にそれぞれのカテゴリー別タイトルを競っています。

 このうちクラス区分は非常に解かり易く明快な区分の仕方で、つまりエンジンの排気量の大きさによる階級区分で現在1〜8まであります。細かく言うと過給器(ターボなど)の有無によって係数を掛け合わせたり単純な排気量の大きさだけではないのですが、実際のところWRCにおいてこのクラス区分が取り沙汰される事は稀で、ギャラリー側の関心の大多数はやはり総合順位だし、そこで優勝を争うのはやはりトップカテゴリーです。

 それよりやたら出てくるカテゴリー区分はグループ区分の方です。これはFIAの認可方法による区分の仕方なので同一車種でもグループAとグループNがあったりして、初めてWRCに飛び込む人はチンプンカンプンになるかも知れません。
 グループによる区分の仕方はまず生産台数や車体形状などに基づいてグループA、B、CとFIAの認可(ホモロゲーションと言う)を受けます。実際WRCに参戦するマシンはグループAとBなのですが、このうちグループBは1986年をもって廃止されたので現在はグループAだけとなります。このグループAから更に競技に向けての改造内容によってグループAとグループNに振り分けられていきます。
 したがってグループAとグループNの違いは同じグループAの認可を受けながら競技用改造の内容の違いだけ、という事になります。
 グループNは改造認可範囲が狭くて大体我々が普通にチューンアップ・カーと言ってる程度に納まってますが、グループAは改造認可範囲が広くとられています。

 とはいえ、基本的にグループAは車体の形状・材質・寸法の変更、スポイラー等空力部品の追加・変更、排気量の変更、エンジンやサスペンション形式の変更、エンジンブロックやヘッド、マニホールド、インジェクター、ターボ等主要部品の変更などは認められていない(後述のWRカーは例外)ので、「ラリーで勝てるマシンを」という事になるとメーカー側は市販車の段階でそれら改造が認められていない部分の全ての処置を施します。ランチア・デルタやランサー・エボリューション(Yまで)などの市販車としては有り得ないオーバーフェンダーや放熱孔やスポイラーやビッグタービンのターボなどはそのせいな訳です。
 またロールゲージ、アンダーガード、マッドフラップ(泥よけ)、安全燃料タンク等の競技用保安部品については装着が義務付けられています。
 なお、このグループAの公認を受けられる車両は1年間の生産台数が2500台以上(1992年までは5000台以上)で市販されており、4座以上でエンジンをフロントに搭載している、というのが条件です。だからNSXやポルシェは認可を受けられません。

 またこのグループAにはキット・カー、さらにそれに続いてWR(ワールド・ラリー)カーという特別な存在が追認されました。

 これら「特例」ともいえる規定のマシンが認められた背景には欧州のメーカーが次々と撤退もしくは撤退を予定しての規模縮小を行い、また新規参入も見込めないという時代背景がありました。ラリー向けに限らずおよそスポーツ・カーというものはマス・マーケットを持たない存在ですが、その中でもさらにホモロゲーション用マシンという特殊なモデルとなればなおさらです。そんな商売上なんの旨味もないものを開発し生産することから欧州メーカーは手を引いてしまったのです。これは量販車に近い車種のはずのグループAでもインテグラーレというスペシャル・マシンを作り上げたランチアの本気が逆に仇となってしまった現象といえます。結局、当事者のランチアも親会社フィアットの意向で撤退、WRCに残ったのはそれだけのマシンを量産しても売上げが見込める日本メーカーと欧州メーカーで唯一、惰性で続けているような状態のヨーロッパ・フォードだけとなりました。

 この状況をヨシとしないFIAは欧州メーカーに規制緩和という作戦に出ます。それがまず「NA2WDでもターボ4WDと対等に戦えるマシン」という名目で導入されたキット・カーです。
 キット・カーはグループAをベースにエンジンは同一系列で年間25000基以上生産されたものであれば換装できる上、改造範囲も通常のグループAより広く、ボディは同様に同一系列のモデルのシルエット(原型を連想させる形状)を持っていれば片側70ミリまで拡幅可能、バンパーやグリルは形状変更可能でリア・スポイラーは大きさに制限はあるものの追加・変更可能、リア・サスペンションに至ってはその形式まで自由に変更可能というもので、その「キット」を20台分生産すればホモロゲーションを得られるというものです。

 FIAのこの作戦には特にフランスのプジョー、ルノー、シトロエンが積極的に食いつき、またフィアットやセアト、シュコダらも興味を示し一応の成功をみます。これに気を良くしたFIAは更にこのキット・カーの概念を広げたWR(ワールド・ラリー)カーという新規定を打ち出しました。
 WR(ワールド・ラリー)カーとは上記したキット・カーの規定に加えてエンジンのターボ化、駆動方式の4WD化を認めたものと思ってください。これを受けてキット・カーで限定的に参入していた欧州メーカーのうちプジョー、シトロエン、セアト、シュコダらが本格的なワークス活動復帰を果たします。さらに低迷していたフォードもWRカーを開発して活気を取り戻しましたが、ここでWRカーは「グループA向けターボ4WDスポーツを持たないメーカーへの特例措置」という本来の目的を失った感もあります。スバル、続いてトヨタといった「持てる者」達のWRカー参入により話は本末転倒となり、その理念を理解していたかいなかったかは別として最後まで通常のグループAマシンを使い続けたミツビシも遂にはWRカーを開発しました。

 このWRカーは建て前上はグループAに属していますが、実際にはまったく別のものであり、見ようによってはかつてのグループBをも上回るものと考えていいでしょう。

 また欧州メーカーのモータースポーツ離れ対策として4WDターボ車は年間1000台生産でグループN限定のホモロゲーションを与える特例措置も導入されていますが、現在あまり効果はないようです。


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